薬が増えても治らない…浜松在住の60代女性の過敏性腸症候群(IBS)と機能性ディスペプシア(FD)を救った漢方での「気の巡り」の整え方

過敏性腸症候群への漢方的な対策について

10年間続く胃腸の不調と「薬漬け」の不安から解放へ

過敏性腸症候群(IBS)や機能性ディスペプシア(FD)は、現代社会において多くの人が抱える悩みです。病院で検査をしても胃や腸そのものに炎症や潰瘍といった異常が見つからないにも関わらず、強い腹痛、下痢、便秘、胃の張り、吐き気などのつらい症状が続くのが特徴です。特に、その背景には、自律神経の乱れ、すなわち「ストレス」が深く関わっているケースが非常に多く見られます。

ここ浜松でも、長年原因不明の胃腸の不調に悩まれ、病院を巡ってもなかなか改善しないというお悩みを多く耳にします。薬を服用しても根本的な解決に至らず、「薬が薬を呼ぶ」という悪循環に陥ってしまう方も少なくありません。

今回ご紹介するのは、約10年間、IBSとFDに苦しめられ、いくつもの薬を服用しても症状が改善しなかった60代の女性、Aさんの症例です。彼女はなぜ、薬が増えても治らなかったのか?そして、「漢方」と「ストレス」を切り口にしたアプローチで、どのようにして長年の不調から抜け出すことができたのか?その詳細を専門的な視点から徹底解説します。


目次

症例紹介:60代女性 Aさんの「10年の不調」の道のり

1. 不調の始まり:IBSの診断と睡眠障害の併発(10年前)

Aさんの不調は、約10年前に義母様との同居を始められた時期と重なっていました。当初は空腹時にもお腹の張りを感じる程度でしたが、ある日突然の激しい下痢を境に、便秘と下痢を繰り返すように。

「今まではこんなことは無かったのになんで・・・」と

心配になり病院で大腸カメラ検査を受けましたが、組織に異常は見当たらず、「過敏性腸症候群(IBS)」と診断されました。

また、同時期に睡眠にも深刻な影響が出始めます。入眠に時間がかかる、眠りが浅い、わずかな物音で目が覚めてしまうなど、熟眠感が得られず、疲労が蓄積する悪循環に陥っていました。

2. 処方薬とその作用、そして多剤服用による「負のスパイラル」

IBSと睡眠障害に対し、Aさんには複数の西洋薬と漢方薬が処方されていました。特に、複数の医療機関から出された薬が重複・干渉し、結果的に症状を複雑化させる「多剤服用(ポリファーマシー)」の副作用が今回のこの症例では明らかに確認することができました。

【IBS・消化器系に対する処方薬の詳細と多剤服用の問題点】

薬剤名作用(薬理作用)Aさんに起こった問題点
トリメブチン消化管の平滑筋に作用し、亢進した運動は抑制し、低下した運動は促進する。IBSの症状改善に使用される。腸の動きを調整する薬ですが、症状に応じて腸の平滑筋の動きを抑制する側面もあり、ガス貯留の一因にもなり得る。
ブチルスコポラミン腸管の平滑筋の過剰な緊張を緩める(抗コリン作用)。差し込むような腹痛の頓服薬として使われることが多い。【問題点:抗コリン作用の副作用】この薬の最大の問題点は、強力な抗コリン作用です。これは副交感神経を抑える作用であり、唾液腺の分泌低下(口渇)などとともに、腸の蠕動運動を直接的に抑制します。これにより、腸内での内容物の停滞時間が長くなり、便秘やガスの発生・貯留を強く引き起こす可能性が高く、IBSの症状を複雑化させてしまいました。
六君子湯胃の機能(気・水)を改善し、食欲不振や胃もたれに用いる漢方。胃の機能を高める効果は期待できるが、Aさんの根本原因である「ストレスによる気の停滞」への直接的なアプローチとしては力不足だったと考えられます。
ガスコン(ジメチコン)腸内に溜まったガスの表面張力を低下させ、気泡を合体させて排出しやすくする(消泡作用)。複数の薬の副作用(便秘・腸の動きの抑制)でガスが溜まりやすくなったため、その副作用を打ち消すための薬として追加されました。これは、「薬の副作用を治療するために別の薬を飲む」という多剤服用の典型的な負の連鎖です。

【睡眠に対する処方薬の詳細と胃腸への影響】

薬剤名作用(薬理作用)Aさんに起こった問題点
ルネスタ(エスゾピクロン)非ベンゾジアゼピン系睡眠導入薬。脳内のGABA受容体に作用し、入眠を助ける。【問題点:副作用のクロス】非ベンゾジアゼピン系は比較的副作用が少ないとされますが、ルネスタのような睡眠薬も、消化器系に影響を及ぼし、胃腸障害(便秘や下痢)を引き起こすことが報告されています。Aさんの場合、抗コリン作用のあるお腹の薬と、睡眠薬による消化器系副作用がクロスしてしまい、お腹の不調をさらに増悪させてしまった可能性が極めて高いのです。

Aさんは、お腹の張りが強くて苦しく、ガスコンを服用。その後、お腹が全く空かなくなり、病院で再度検査(胃カメラ)を受けましたが異常はなく、「機能性ディスペプシア(FD)」と診断されました。これに対し、病院では「補中益気湯」や胃薬が追加されましたが、症状は改善せず、薬をやめるとすぐに元通りになってしまう状態。このままでは良くならないという強い不安を感じたAさんは、約10年ぶりにご自身の症状の原因を見つけるために当薬局へご相談に来られました。


🔍 漢方的な視点:病院では見逃されがちな「真の原因」

問診を進める中で、この症状が出たきっかけを尋ねたところ、Aさんは「おそらく、義母との同居を始めた時からだと思います」と答えられました。義母様は厳しい物言いをされる方で、Aさんは長年、日常の中で常に強いストレスを感じ、体が慢性的な緊張状態に置かれていたことが問診によって分かりました。

1. IBS/FDの真の原因:「脳腸相関」と「気滞」

IBSやFDは、胃腸の組織そのものには異常がないことから、「脳腸相関」と呼ばれる、脳と腸を繋ぐ自律神経系の乱れが原因で発症すると考えられています。

  • 西洋医学(病院):組織に異常がないため、「IBS」「FD」と診断。治療は主に症状のコントロール。
  • 東洋医学(漢方):胃腸を動かす「指令(自律神経)」の部分に乱れがあると考える。Aさんのケースは、まさにこの自律神経系の乱れがすべての症状に直結していると考えました。

2. Aさんの核心的な原因:「気滞(きたい)」とは

漢方では、Aさんのように自律神経が乱れて交感神経優位に傾いている状態を「気滞(きたい)」と呼びます。

気滞とは?

漢方における「気」は、体を動かすエネルギーや指令系統のようなものです。外からのストレスや精神的な緊張によって、この「気」の巡りが停滞し、体の中の巡りが悪くなってしまうと考えます。

気滞の具体的な症状Aさんの症状との一致
🫄 お腹や胃が張っている感じがするバッチリ一致:腹部膨満感、胃の張り、ガス貯留
🤢 吐き気、胃もたれ感、ゲップ、おならが多いバッチリ一致:FDによる食欲不振、ガス
😴 睡眠の質の低下(入眠困難、熟眠障害)バッチリ一致:入眠困難、眠りが浅い、物音で起きる
😔 精神的な抑うつやイライラバッチリ一致:初回相談時の顔色の暗さ、精神的ダメージ

Aさんは、リラックスできる暇がないまま10年間を過ごし、症状的にも自律神経の乱れ、すなわち**「気滞」の症状が完璧に当てはまっていました**。この滞った「気」を巡らせることが、IBS・FD・睡眠障害のすべてを解決する鍵だと確信しました。


💊 漢方アプローチ:気の巡りを良くする「開気丸」と頓服の「敬震丹」

Aさんの根本的な体質である「気滞」を改善するために、当薬局では二段階の漢方アプローチを提案しました。

ステップ1:気の巡りを改善する主役の漢方「開気丸」

お腹の症状と精神的な抑うつ感を同時に改善するため、まずは「開気丸(かいきがん)」をメインで服用していただくことをおすすめしました。

開気丸の作用

  • 気の巡りをとにかく良くする: 停滞した「気」を全身に巡らせることで、自律神経の乱れを整え、胃腸の緊張状態を緩和します。
  • お腹の張り感、張りによる痛みを緩和: 特にストレス性の膨満感に優れた効果を発揮します。

【開気丸の主要構成生薬と作用の詳細】

開気丸は、主に**理気薬(りきやく)**と呼ばれる「気の巡りを改善する生薬」を多く含んでいます。

主要生薬分類主な作用
枳実(きじつ)理気薬ストレスや精神的な緊張によって停滞した「気」をスムーズに巡らせる。精神安定作用も持つ。
陳皮(ちんぴ)理気薬消化管内の余分な湿(水分や停滞物)を取り除き、消化機能を高め、腹部膨満感を解消する。また吐き気などの胃腸症状を取り除くサポートをする。
厚朴(こうぼく)理気薬滞った「気」を下げる作用があり、胃腸の張りや停滞感を改善し、特に腹部の膨満感を和らげる。
延胡索(えんごさく)止痛薬ガスの停留や、胸部や脇部の張りによる痛みを和らげる作用を持つ。

【1週間後の変化:驚きの効果実感】

初回相談の1週間後、Aさんは来店されましたが、初回は暗く辛そうだった顔色が明るくなり、気持ちが落ち着いた様子が伺えました。お腹の張り感が明らかに和らいできたとのことで、引き続き開気丸を飲み続けることを決意されました。

ステップ2:調子の波に対応する頓服の「敬震丹」を追加

その後1ヶ月、3回目のご来店時には、Aさんはニコニコの笑顔で来店。お腹が空くようになり、ご飯の量が増加し、元気も出てきたとのことでした。

しかし、「足の重だるさ」「疲労感が抜けない」「たまに急に胃もたれ感がする」というように、まだ体調に波があることも分かりました。特に義母様との関わり合いの中で、急に体が緊張してしまう瞬間があるようでした。

そこで、開気丸で日常の土台を整えつつ、急なストレスや緊張に対応するための頓服薬として「敬震丹(けいしんたん)」を追加でご提案しました。

【敬震丹の特異な作用と主役生薬の詳細】

敬震丹の主役は、極めて貴重な動物生薬である牛黄(ごおう)麝香(じゃこう)です。これらは、漢方において「開竅薬(かいきょうやく)」という特殊な分類に属します。

開竅薬とは?

「竅(きょう)」とは、体にある穴、すなわち五感や意識の通り道を指します。開竅薬は、極度の緊張やストレスによってギュッと引き締まってしまった体の強張りや意識の閉塞状態を「開いて」緩める(開竅)作用があります。

主要生薬分類特徴的な作用
牛黄(ごおう)開竅薬/清熱解毒薬興奮した中枢神経を鎮静化させ、自律神経の緊張を強力に緩める。動悸や不安感に特に有効。
麝香(じゃこう)開竅薬/活血薬体内の滞り(特に気の巡り)を破るほどの強力な「通」の作用を持つ。他の生薬の成分を奥深く、速やかに到達させる働き(導薬作用)も持つ。

Aさんは、気持ちに整理がつかない時や焦ってしまう時に敬震丹を服用したところ、スッとお腹が空き、便通も改善されるとのことでした。開気丸だけでは対応できない「急な緊張」や「焦り」による自律神経のスイッチの閉塞を、敬震丹が強力に「開いて」緩めてくれたのです。

牛黄や麝香は、動物性の生薬で、とても希少なため少しお値段が張ってしまいます。しかし、その分効果は適面に出やすく体感として実感いただけることが多いです。


🎉 驚きの結果:多剤服用からの卒業と腸内環境の劇的改善

開気丸と敬震丹を服用をしばらく継続していただいた結果、Aさんの体調は劇的に改善しました。

1. 胃腸薬からの完全な卒業

私たちの方からは、積極的にお薬を減らすようにということはお伝えはせず、病院と話し合ってお薬の服用については決めてくださいねというようにお伝えはさせて頂いていました。

Aさんもアドバイス通り、胃カメラや大腸カメラなどのステップをしっかりと踏んだ上で、長年服用されていたIBS・FD関連の西洋薬(トリメブチン、ブチルスコポラミン、ガスコンなど)をすべてやめることができました

副作用の負の連鎖から解放され、ご本人様も「こんなに薬を減らせるなんて!」と驚かれていました。

ルネスタなどによる睡眠薬も服用されていましたが、「認知機能にもしかしたら影響が出るかもしれない・・・」ということを心配されていらっしゃったので、そちらも今後は減らしていきたいとのことで、着実にステップを踏んでいます。

2. 腸内環境の改善

定期的に病院で受けていた大腸カメラ検査の結果にも、大きな変化がありました。便通が非常に良くなり、医師からも「過去で一番綺麗だ」と告げられるほど、腸の状態が改善。病院側からも、今後は「3年で1回でいい」と言われるほど、状態が安定しました。これは、漢方薬が単に症状を抑えるだけでなく、ストレスによって乱れていた自律神経の指令系統そのものを整え、胃腸が本来持つ力を取り戻すことができた動かぬ証拠です。

3. 前向きな未来へ

Aさんは現在、「今後は、ストレスに対する対処を自分の中でもっと上手にできるようにして、だんだんと漢方薬の量も減らしていき、本当に元気な体を手に入れたい」と、ご自身の体調に前向きに向き合えるようになりました。長年の症状の原因は、胃腸そのものの異常ではなく、「気の巡りの停滞」という、漢方的な視点からしか見えない部分にあったのです。


まとめ:IBS・FDが治らないと感じるあなたへ

Aさんの症例は、過敏性腸症候群(IBS)や機能性ディスペプシア(FD)の真の原因が、外部からのストレスによる「気滞(気の停滞)」にあることを明確に示しています。薬の多剤服用による副作用のクロスは、症状をさらに複雑化させ、不安を増大させます。

  • 病院で「異常なし」と言われた胃腸の不調。
  • 薬を飲んでも、むしろ副作用で悪化している気がする。
  • 長年のストレスや精神的な緊張に心当たりがある。

もしあなたがこのような状況で「治らない」と諦めかけているなら、漢方の専門家に相談し、「気の巡り」という視点から体質を見直してみることを強くおすすめします。

【漢方の得意なアプローチ】

  1. ストレスによる緊張(気滞)を緩める。
  2. 自律神経の乱れを整え、胃腸への指令を正常化する。
  3. 多剤服用による副作用の悪循環を断ち切る。

🌸 気滞を解消するためのセルフケア(浜松での生活で)

漢方薬による治療と並行して、日常でできる簡単なセルフケアを取り入れることで、「気滞」の解消を促すことができます。

  1. ゆっくりとした呼吸法(腹式呼吸): 自律神経を整える最も簡単な方法です。特に、吐く息を長く意識することで、副交感神経が優位になりやすくなります。ストレスを感じたときに数回行うだけでも、緊張が緩和されます。
  2. 温活(入浴法): シャワーだけでなく、湯船にゆっくり浸かる時間を作りましょう。38〜40°C程度のぬるめのお湯に15〜20分浸かることで、全身の血流が良くなり、自律神経がリラックスモードに切り替わります。
  3. 香りによるリラックス: 漢方でも「気」を巡らせる作用を持つ柑橘系の香り(リモネン成分)や、ミント、ラベンダーなどは、緊張を解きほぐすのに有効です。アロマオイルを焚いたり、入浴剤として活用したりするのもおすすめです。
  4. 浜松の自然を活用した散歩: 運動自体が気の巡りを良くしますが、浜松の雄大な自然の中(例えば、浜名湖周辺や森林公園など)をゆっくり散歩することで、視覚からもストレスが軽減され、リラックス効果が高まります。

 最後に:浜松で「漢方やストレス」の悩みを相談するなら

「自分もAさんのように、ストレスが原因で体調を崩しているのかもしれない」

もしそう感じられたなら、ぜひ一度ご相談ください。長年の経験を持つ専門の薬剤師が、あなたの胃腸、睡眠、精神状態のすべてを細かく問診し、あなただけの漢方処方をご提案いたします。

あなたの10年の不調も、漢方の力で変えられるかもしれません。

  • 店舗名: 漢方相談おくすりのまるはち
  • 所在地: 〒435-0038 静岡県浜松市中央区三和町789 国道一号線からすぐ!
  • 営業時間: 10:00〜19:00 日・月・祝 休み

ご予約/お問い合わせ: 053-469-9308

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